いよいよはじまる夏の嵐!に先駆けて

制作道場ファンの皆さま、ファンというほどではない皆さま、初めて聞いた皆さまへ

坂本善三美術館は、今年もやります「若木くるみの制作道場」。

 

「若木くるみの制作道場」というのは、2013年夏に坂本善三美術館で開催した展覧会で、30日間の会期中、毎日新しい1作品を提案・制作するというものです。

昨年は、会期の前日午後に初めて初日のプランが提示されるという、文字通りぎりぎり綱渡り的なスタートを切り、膨らんでゆく「本当に30日間やりきれるんだろうか」感をなんとかやり過ごしながら日々過ぎていきました。しかし、私たちの胸にあったのは、「きっと何かやってくれるに違いない」という根拠のない確かな期待。日々制作に追い込まれ、ギリギリと七転八倒するからこそ、若木はきっと私たちに新たな地平を見せてくれるに違いない。そんな思いで私たちは展覧会を見守りました。

そして、何とか無事に30日間のゴールにたどり着いたときの、あの得も言われぬ高揚感と達成感と終ってしまった寂しさ。いまだにありありと思い出すことができます。ブログを読んで下さった方々にも、くるみロスに陥った方もおられたのではないでしょうか。

(昨年のブログはこちらを参照 http://sakamotozenzo-events.hatenablog.com/

 

そんな麻薬の味を知ってしまった私たちは、うっかり今年も「若木くるみの制作道場」を企画してしまいました。ついうっかり。だってどうしてももう一度見たかったのですもの。どうしてももう一度見せたかったのですもの。

 

去年の制作道場を、「伝説」と評してくださった方もおられました。去年1回で終わったほうが「幻の」「伝説」として美しく終われたのかもしれません。1作目で大ヒットした映画が1作で終わっとけば…としばしば言われるように。

しかし、巨匠や重鎮じゃあるまいし、「伝説」なんて100年早いし、自分たちで「伝説」ぶるなんてそれこそ自己満足。大体まだまだ知ってほしい人見てほしい人がいっっっっっぱいいるというのに「伝説」なんてとんでもない。ただ、たとえ「伝説」じゃなくても、絶対見たほうがいいもので面白くてたまらないものだったことは確かだし、私たちはもっとみんなに見せたくて知らせたくてたまらないのです。「伝説」なんて何ぼのもんじゃと(強がって)蹴っ飛すことにしました。

 

去年は、「はたして毎日1プラン提案できるのだろうか」「はたしてそのプランは成功するのだろうか」という、言ってみれば親目線のようなハラハラドキドキでした。でも、30日間毎日1プランを達成することも、私たちに新しい地平を切り開いて見せることも、昨年のうちにやってのけてしまった今年は、「はたして去年を超えられるのか」「みんなの期待にこたえられるのか」という、一つ次元の上がったハラハラドキドキが待っていました。「去年を超えているのか」という思い上がった自己規制や「みんなの期待にこたえる」という陳腐な迎合に、いかに取り込まれずに突き進んでいけるのか。

 

そんなときに力になるのが、皆さんの力です。

今年、若木が掲げたキーワードは「自問他答(じもんたとう)」。どうやら本人としては、自分の出した問いを皆さんにこたえていただくという腹づもりのようです。しかしこの奇妙な言葉は、来場したみなさんが作品を見て、笑って、参加して、時には酷評し、時には感動する、そのすべてが絡み合ってできあがる「制作道場」の姿そのものでもあるのです。

 

若木くるみと「みんなの」制作道場。この夏はこれでいきたいと思います。

 

坂本善三美術館 学芸員 山下弘子

 

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