初日 ふりだしに戻る

昨年の制作道場は、「前向きな後ろ向き」で終わりました。

 

http://sakamotozenzo-events.hatenablog.com/entry/2013/09/02/000527

 

その最終日を、夕方5時のゴールシーンから巻き戻して再現しようと思いました。それしかないと思いました。

 

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前回の記録は830回。

 

その830個のチェックを、ひとつひとつ、走っては消し、走っては消しして、ホワイトボードが白に戻るまで走り続けます。

 

ザッザッザッザッザッ、前向きの自分と後ろ向きの自分が砂利を蹴散らして行き来します。

 

前回、スタッフの面々とお客のみなさんとで作り上げた830回の「感動」を、一旦ゼロまできれいさっぱりリセットさせないと、何も始められないと思ったのです。

 

………

思ったのです。他にも色々、とにかく色々、思ったのです。

 

フリーズのちスリープ。強制終了シャットダウンになる前に山下さんにバトンタッチします。

 

 

ーーー本日の学芸員赤ペンーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ついに始まりました。若木くるみの制作道場2014。

昨年の制作道場でも、好評を博しファンも多かったこのブログですから、いよいよ初日が始まった今日から「くるみちゃんの日記が読める」と楽しみにしておられた方も多いのではないでしょうか。

 

そしてこの肩すかし。

 

くるみちゃん!これじゃ初日からつまんない作品だったみたいに見えるじゃないか!

 

…というわけでちょっと補足いたします。

 

昨年の最終日の作品「前向きな後ろ向き」とは、フィナーレにふさわしく「後ろの顔」と「マラソン」という若木くるみの代表的ボキャブラリーを組み合わせたもので、美術館の前庭を8時間延々と前向き後ろ向きに往復走するものでした。30日間七転八倒した30作品の集大成として、制作道場にかかわってくれたみんながくるみちゃんの後ろの顔を描き、くるみちゃんはその人の名のゼッケンを背負い、エイドにはお供えのようにてんこ盛りの食べ物が積まれ、30作品が描かれた横断幕&ゴールテープが準備され、最後を見届けようと多くのギャラリーが見守りました。

小雨降る中走り出した後、途中雷雨&豪雨、そしていよいよゴールの時だけ日がさして青空が広がるという、天気まで完璧に演出に取り入れた、これ以上ない感動フィナーレだったのです。

 

昨年のブログをご覧いただくと、いかに我々がその興奮と感動に浸っていたかがお分かりになるかと思います。

…そして、もしかしたら多少うざいと思われたかもしれません。

 

そしてその点こそが、今回の作品の発想の肝だったのではないでしょうか。

「感動した」「もう一回見たい」「あれはよかった」

確かにそうです。去年の制作道場は、いつまでも思い出に残るいい展覧会だった。

しかし、そこにとらわれている限り、その思い出に後ろ髪を捕まえられている限り、今年の制作道場は2回目のジンクスにどっぷりと飲み込まれてしまうのだ。

そう、私たちは、もう去年みたいに純粋にハラハラドキドキを楽しむことができなくなっているのです。

「去年みたいにおもしろく」「去年よりおもしろく」ではなく、いつもいつもその時に一番おもしろいものを見せていくしかないのだ。

 

今回の「ふりだしに戻る」は、感動のフィナーレと同様のシチュエーションながらも、エイドも最小限の水分と塩分、見守るギャラリーもほとんどない中、淡々とスタートしました。途中も、通りすがりの来館者の方が「何かの練習してる…」とつぶやいて行かれたくらい、劇的でもなんでもなく、静かにただただ前向きと後ろ向きがバトンパスしながら走り続け、ホワイトボードに記された830回の往復回数を1つずつ消していきました。

これは昨年の制作道場を経験した者たち(くるみ本人、美術館スタッフはもちろん、来館者、ブログ読者も含めて)に向けての「去年のことはリセットして、今年も一からやり直します!」という決意表明でもあり、初道場の皆さんに向けての自己紹介でもあったのです。

そして、淡々と走り続けた往復回数がどんどん減っていき、いよいよ830回目(つまり1回目)が消されて真っ白に。

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そこに赤い色で、新たな1回が刻まれました。時刻は16:50。

昨年の830回を超えて、今年の成功を祈りながらさらに走り続けようとしたその時。

スコールのようなどしゃ降りと雷雨。雷雨。雷雨。

残り10分を豪雨の中走ることとなった今回、結果的に天候までも前回を巻き戻し、結果的に感動的なゴールとなってしまいました。

昨年も何度もこういうことがありましたが、天候までもここまで自在に演出に使えるなんて、若木くるみか聖徳太子くらいではないでしょうか。

 

制作道場、今年も見逃せないことは確かです。

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見たことのある轍。

 

※くるみちゃんへ業務連絡

作品の内容や経緯は、作家本人が書いたほうがいいのではないでしょうか。赤ペンはあくまでもそれに対するコメントです。日記かけないとかいつまでも「引きこもり明け」みたいなこと言ってないで、ガンガン行ってください。