中学生ワークショップ うらの顔② 8月5日

ワークショップ2回目。

 

今日は前回の倍の12名が参加、しかもうち10人は男の子ということで、元気なのが揃っているから今回は特ににぎやかな回になると思うよ〜という前情報に、こちらもぐっと力がこもります。

これまではワークショップ開始前にあらかじめ後頭部をつるつるに剃り上げて挑んでいたのですが、今回は剃るところから中学生にまかせるという初の試みをしました。

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後頭部に当たるカミソリの刃、立ち位置の距離感から、おそるおそる取り組む様子が伝わってきます。何人かで交代して剃ってくれました。流血騒ぎは避けられました。

 

ここからが本題。

前回同様「何もみないで後ろ手でお面に顔を描く→ひっくり返して合わせ鏡を見ながら描く」の2段階でもって、お面の両面にうらの顔をつくりました。

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人数が多いことを気にして6人ずつ描いてもらいましたが、観察する側にまわった残り6人の集中力がどうもあまりなくて、この企画…おもしろくないのかな……。どんどん弱気になりました。

やばい、今回も成功すると思ったから前回わざと懐疑的な着地の日記にしてみたのに、このままじゃ物語に起伏をもたせるどころかまっさかさまに墜落してしまう…。

 

出来上がったお面は、何も見ないで描いた時と鏡を見て描いた時でほとんど進歩のない顔のオンパレードで、結果は仕方ないとしても、描いている過程に、よく見て対象を写し取ろうとする意欲が感じられなかった。よそ見しておしゃべりしている男子につい「集中して!」って注意したりしていて、先生ぶっている自分の空回りが滑稽でした。自分が生徒だった頃の先生の苛立ちが手に取るようにわかった。

ワークショップを進める中で、自分にも何かしらの発見や高揚があるだろうと期待して、いつも何を話そうか決めずなりゆきにまかせた総括をしているのですが、今日は見事に言葉に詰まりました。「うらの顔を描く」ことに関して言っておきたいと思うことがさっぱり浮かんでこなくて、しどろもどろになったあげく教育実習生が助けを求めるみたいな顔で山下さんのほうを見ました。

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これ、ある程度「描ける」素地のある人向け企画だったかな……。中学生が帰ってから、あと4回のワークショップをどう切り抜けたらいいのか考えて、背筋が寒くなりました。

絵が描ける以前にまず「見る」ことができないと厳しい気がします。「見よう」「描こう」という心意気を少しは持ってもらわないと。そしてそれは、もともと絵に苦手意識のある人には残念ながらすごく難しい課題なのかもしれません。

去年は感覚をたよりに「何か」を、本当に何のかたちにもなっていない「何か」を描けばよかったけれど、今年は線の集合を「顔」に見せなくてはならない。別にうまく描かなくたって全然いいのですが、そこに試行錯誤の跡が見えないと、やっぱり萌えられない。並んでいるのはどれもこれも形式的なイメージから抜け出ない似たり寄ったりの「顔」ばかりで、「うらの顔」というタイトルとこじつければ何やら意味ありげな解釈をでっちあげることもできそうだけど、そうまでするほど気がのらないっていうか…だって…絵が退屈で……。

f:id:kurumi-zenzo2014:20140806054640j:plain f:id:kurumi-zenzo2014:20140806054544j:plainこれはよかった。

企画に対する自信があっただけに、どこが問題なのか、山下さんはじめ美術の先生とも徹底的に話し合いました。

物事は失敗からしか学べないという教訓は、実に全くその通りだと思いました。

より深く、よりダイレクトに「うらの顔」を味わってもらうために、我々はどんな工夫をすべきなのか。改善案がいくつも提示されて、非常に意義のある反省会になりました。

早く試してみたい。今はもう、明後日のワークショップが待ち遠しいです。

夏休みの貴重な一コマをせっかく美術館に費やしてくれているのだから、本当は、今日のみなさんにも生涯忘れられないくらいのトラウマ美術体験を提供したかったのですが、わたしの頭を剃る導入部がピークになってしまいました。……それ美術館じゃなくて美容院…。

それとも、美術館で人の後頭部を剃ったってことに、何か残るものがあったかな。

 

午後は決まっていない明日のプランの話し合い。

雨天続きでお客さんの少ない中、うらの顔を装着して大はしゃぎの女の子と、何度も何度もうしろに倒れる「うらの顔おじぎ」をして遊びました。

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------本日の学芸員赤ペン---------------------------------------------------

 

くるみ先生の中学生ワークショップ第2回目。

1回目が順調だっただけに、2回目もスムーズな盛り上がりを期待したものの、人数や段取りやノリやキャラや様々なものが絡み合って、ショッピングモールの体験コーナーのように、流れ作業になってしまいました。

でも、決して段取りが悪かったわけでも、声掛けや説明が足りなかったわけでも、中学生たちが楽しんでなかったわけでも、非協力的だったわけでもないのです。メンバーの組み合わせやちょっとした言葉や流れによって、大きく雰囲気や集中度が変わってしまうのがワークショップ。

生ものですね。

 

くるみちゃんが終了時からすぐに、今日の納得いかなかった点を挙げ、改善するにはどうすればいいか考え、話し合い、次への方向性を見出していく姿を見ていると、中学生のワークショップも、単なる教室ではなく、一つの作品として考えてくれているのだなと思ってうれしかったです。

 

全国の美術館学芸員の皆さま、若木くるみは去年からさらにワークショップ力に磨きをかけています。話し合い力もありますので、貴館での御一考を重ねてお勧めいたします。

 

坂本善三美術館 学芸員 山下弘子