台風の目 8月9日

 

今朝、テレビからトゥルリラリンという音がして、台風のお知らせでした。小国町に暴風警報が出ています。

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台風の報道で騒がしかった3日前に、友人がアイディア「台風の目」を提案してくれました。

家から持ち込んだ大量の白い布の使い道にも頭を悩ませていたのですが、ここだ! と思いました。

白い布、「台風の目」でようやく起用のチャンス到来です。

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床に敷いた白い布の上を、わたしがごろごろ転がって自分に布を巻きつけていく(頭のてっぺんには第3の目がある)とか、直立した状態でくるくる回って放射状にのびた布を体に巻きつけていくとか、いくつか案はありましたが、ダイナミックに見せることを優先して、スペースを大きく使い庭を走り回ることにしました。

 

善三美術館の柱に布ロールをいくつか固定しておいて、巻き出して庭の中央に渦巻きを作る作戦。

地面に杭を打って、布が台風っぽいカーブを描くよう道筋をつけておきます。

 

 

微風、小雨。

本当なら、暴風荒れ狂う天気の中で実行したかったのですが、お客さんの集まったタイミングで外に飛び出すことにしました。

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布を幅広の状態を保ったまま全速力で、ふわっふわっと華麗に白いラインを重ねていく、…イメージでしたが、はじまってすぐに、布はよれたら紐状になることを思い出しました。そして、曲線を描くのなら「よれ」は避けられないことも…。

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ガイドになるべき杭にひっかかってなめらかなラインを描けなかったり、ロールが紐にからまって引き出せなかったり、行ったり来たりで、台風、めちゃくちゃ滞ってます。

造形も、圧倒的な布不足! 台風の迫力ある白い渦の厚みにはほど遠く、クモの巣と言われたほうがよっぽど納得できるスカスカ感。

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右往左往ののち、引き出せる残りの布がわずかになったところで、このままで終わってはいけないというセンサーが働いて、突き動かされるようにお客さんに協力を呼びかけました。

「わたしはこれから台風の目として真ん中にずっとうずくまるので、みなさん出てきてわたしのまわりに布を集めてくださいー! 台風らしく!」

そんなプランはありませんでした。自分でもびっくりです。でも、台風は思いがけないあれこれを一気に巻き込んでいくものだし、みなさんにも災害にあったと思って参加していただくことにしました。

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どちらからいらしたんですか、など地面につっぷした状態で聞くと、山形や奈良など遠方からお越しの方もいて、世話話をしながら親睦を深め合いました。

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「頭じゃなく服に目描いたほうが目立ったんじゃないの」と言われれば、「ですねー! じゃあ服ごと布でくるんでもらおうかな」、と、お客さんのアイディアも即巻き込んでかたちにしていきます。

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台風の目の中は穏やかな晴天だと聞きますが、覆われた布の中は繭のようで、自分の静かな呼吸があたたかでした。

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午後は、台風の撤退。

這いつくばってちらばった布をかき集めます。

匍匐前進は最もきついトレーニングなので、苦も無く四苦八苦できるだろうとは思っていましたが、雨を含んだ布が大変な重さで想像以上にえらく難儀しました。

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舞台袖に捌けてから、スタッフ4人がかりでぐっちょぐちょの塊を移動させたのですが、「重っ! さっきの演技だと思ってた。」と、自分がオオカミ少年扱いをされていたことを知ってショックでした。

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---本日の学芸員赤ペン---------

 

今年の夏はどうも天気が悪く、夏休みも週末を狙っては台風がやってきます。

嵐を呼ぶ女くるみちゃんが、それを放っておくわけもなく、本人が「台風の目」になる企画が出されました。

作品のイメージとしては、台風真っ只中の暴風雨吹き荒れる中で大量の白布と格闘しながら、それを庭中に広げて台風の渦を表現するというものでした。想像するに壮大なインスタレーションとなりそう。公立美術館としては暴風雨時にそんなことをさせるのはNGなんでしょうけど、でもそんな中でしかできない表現だし、二度とこんなタイミングで台風呼べるわけではないし・・・。

まあ、危なくなければいっか!芸術至上主義。すべての道はアートに通ず。

 

というわけで台風接近の朝を迎えてみたら、雲の流れはいかにも台風らしいものの、風雨もささやか。結果的に作業しやすい状況となり、zenスタッフ総出で帯状のロール白布を庭中のあちこちに仕込みました。

お客さんの出足と雲の動きを見ながらいよいよスタート。軒につるされたロール白布を勢いよっく引っ張り出しながら庭中を左回りに走り、台風の渦を作っていきます。

 

・・・がしかし、布の分量不足と庭に造形する装置の検討不足から、台風は迷走を続け、できあがりがどうもパッとしない。

 

そんなときにくるみ台風からまさかの声かけ。「お客さんも傘さして庭に出てきてくださああーい!!」

 

「ええええっっっ!今日の作品、パフォーマンスとインスタレーションを組み合わせたシリアス路線じゃなかったの?」。(以上ビデオ撮影中の山下の心の声)

 

いくら弱いとはいえ、台風のさなかにお客さんを庭に誘い出すなんて普通ちょっと躊躇するところですが、その辺りがまた、くるみちゃんの瞬発力のすごいところ。このままではあまりうまくいかないと判断したときに急遽別の方法を探り、たとえ当初のプランから方向性を大きく変えることになったとしても、力づくでも何でも作品を成功へと導こうとする執念のなせるわざです。

お客さんも意外と皆さんノリがよく、「イヤー、こんなのが見られると思わなかった!」「やってみて初めておもしろさがわかった」などとありがたい模範解答を繰り広げながら手伝って下さいました。

 

即興でインスタレーションをするなら、そしてそこに自分の思い描く形の達成を求めるならば、やはり材料や設備の十全なチェックが必要ですね。しかしインスタレーションよりパフォーマンスやコミュニケーションを重視するならば、完成したインスタレーションより過程が大事。今日の作品はそちらにシフトチェンジして成功したといえますが、もし、事前にインスタレーションへの検討がもっと丁寧になされていたなら、双方の成功を手にすることができたのではないでしょうか。もっとも今回の場合、もしインスタレーションがうまくいっていたらお客さん巻き込みプランにはなっていなかったでしょうけど。

 

午後から行った、台風が去っていくパフォーマンスは、濡れた大量の布が想像以上に重く、這いながらまとめていくのは相当大変だったろうと思います。しかしその分見ごたえもあり、思わずギャラリーも声援を送りたくなりました。ちなみに、あとで白布の片づけを手伝いましたが、大人4人で必死で引きずってやっと動く重さ。くるみちゃんまじですごい。

 

ところで、なぜ台風がほふく前進で這っていったかというと、昨日、熊本の木工作家上妻利弘さんが来られて放った、「もう台風もはってったたい!」というセリフに端を発します。

 しかし実はこの「はってった」は「這っていった」ではなく、「去っていった」という意味の熊本弁です。