後ろ髪ひかれない 8月31日 回想1
わたしの
後ろ髪。
この日用意したのは、虚空に漂う後ろ髪と、
幅広のガムテープ。(右)
ついにやってきた最終日、今日の企画は「後ろ髪ひかれない」。
皆にわたしの後ろ髪をひいていただこうという、よりによってかなりいい気な企画なのですが、肝心の後ろ髪登場の前に、お客さんにはさらなるややこしいコミュニケーションを課すことになりました。
何も知らずに会場に来て、わたしと対面させられ、右手にはペンを、左の手のひらにはガムテープを貼付けられ、「このガムテープがわたしの後頭部の皮膚です。」と重々しく言い渡されたお客さんの気持ちになって、以下の説明についてきてください。
特別表情豊かだった宮崎さんの回をモデルに、いきますね。
これは、わたしの後頭部の皮膚です。
このガムテープに、わたしの目、鼻、口、眉などのパーツを描いてください。
描かれている間、わたしは自分の後頭部に、宮崎さんの顔を描きますね。
描けました? わたしは今、宮崎さんの真一文字に結んだ口を描いています。
「ぼくもそろそろ描き上がります。」
ありがとうございます、神秘的な顔ですね。わたしよりむしろ宮崎さん似ですね。
それではその神秘的なガムテープを、宮崎さんの顔が描いてあるわたしの頭皮(写真なし)に貼付けてください。べったり。空気が入らないように、しっかり。
これで準備完了です。
それでは後ろ髪スポットへ移動しましょう。
先ほど貼付けたガムテープと、後ろ髪とを、一緒にぎゅっとつかんでいてください。
何があっても離さないでくださいね。
いきますよ。
後ろ髪! ひかれな
い!!
!!!
宮崎さん宮崎さん!
お手元に残った、ガムテの裏!! 見てみてください。
は
!!
うつったかな。
頭皮に描いていた宮崎さんの顔が、ガムテの粘着面に転写されて、残るの!
これこれ。
どれどれ。
ちょっと見えづらいですね!
というわけで、わかりやすい方でもう一度!
小国在住のアーティスト、岡山さん。
わたしは膝元の合わせ鏡で自分の後頭部を確認しながら岡山さんの顔を描いています。
岡山さんはわたしの目を大きく美化して描いてくださっています。
わたしの頭皮の岡山さんの顔の上に、描き上げたガムテープを重ねます。
テープのはじっこと、後ろ髪と、ぎゅって、両方持ちましたね?
それでは! 岡山さんに、後ろ髪ひかれな
い!!
……。
残った?
残った!
わたしは後ろ髪ひかれないことより、顔がくっつくかどうかに興味津々でした。
そんなだから最終日が終わったのに後ろ髪ひかれちゃってて! 今!!
昨晩九州を発って今朝しばらくぶりに自宅に帰ってきたのですが、後ろ髪ひかれまくりながら、ぼーっと最終日の一日を、制作道場の30日間を、繰り返し繰り返し反芻しています。
日記更新遅くなってすみませんでした。
載せたい写真がまだたくさん、書かなくてはならない出来事もまだたくさんです。
クライマックスをどこに持っていけばいいのか、構成がまとまりません。
もうあと数回、最終日の「後ろ髪ひかれない」、続けさせてください。
一旦アップ!
とか言っているうちに美術館公式サイトのほうで充実した記事が既にアップされていて、わたしがもたもたしている間に置いて行かれてしまっています…。
どうぞご覧ください。
http://blog.sakamotozenzo.com/?eid=1306233
---------本日の学芸員赤ペン---------------------------------------------------------
最終日を過ぎてしまった今、皆さんいかがお過ごしですか。
お尋ねするまでもなく、皆さんにはいつもの日常が流れていることですよね。
私は今年の制作道場30日間が終わり、日に日に日に日に後ろ髪をひかれてひかれていますが、それを気のせいだということにして赤ペンを書こうと思います。
最終日のプラン、「後ろ髪ひかれない」。
宙に浮いた髪の毛の異様。
道具立てはそれだけ。
最終日にぴったりの意味深なタイトルが何を物語るのか、くるみちゃんの日記が徐々に明らかにしてくれることでしょう。
それにしても今日の日記は、宮崎さんのもはや顔芸と言えるほどの素晴らしく豊かな、挿絵として大変正しい表情に目を奪われて、一回ではやることの説明が入ってきませんね。某紙の記者ながら永遠の部活の後輩的雰囲気を持つ宮崎さんは、「ツイッターで見たから」「今日のは見ときたいと思って」などと、今年もたびたび足を運んでくれました。ありがとう!後輩!人生の。
そして、説明として正しい表情のアーティスト、岡山さん。さすがです。アーティスト的配慮。か?
そしてみなさん、1枚目の写真で、くるみちゃんの後ろの前髪が、随分上まで上がっていることにお気づきでしょうか。
最終日にくるみちゃんの頭皮として使用したガムテープは、普通のやつの倍くらいある、強粘着タイプ。
最終日前日に試しにやってみたところ、首のあたりの皮膚が2回で真っ赤にひりひりに。とても1日中やることは無理だということで、多少でも粘着の抵抗が弱まるように、前髪をより上のほうでぱっつんとやることになったのです。
ひりひりに負けずがんばれ。
最終日はまだ長い。
坂本善三美術館 学芸員 山下弘子