後ろ髪ひかれない 8月31日 回想6 断髪式の模様 

本格的に降り出した雨を機に、走るのを中断して断髪式を敢行しました。

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山下さんのこの結わえた後ろ髪、「ちょこん」を根元から伐採します。

f:id:kurumi-zenzo2014:20140904110021j:plainちょこん

f:id:kurumi-zenzo2014:20140904110024j:plainちょきん

 

f:id:kurumi-zenzo2014:20140904112249j:plain採れた。

f:id:kurumi-zenzo2014:20140904112255j:plainぎええ!

 

山下さんの後ろ髪完成。

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次は頭皮に残った髪の毛をきれいに剃り上げます。

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わたしは他人さまの肌に初めて剃刀を当てがいました。

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すごいやだった、なんでわたしがこんな目に! と思いました。

わたしはだいたい、ふつうの女の子が大好きで、かわいい女の子がちょっとサイケデリックなファッションしてたりするだけで、しゅんとなってしまうんです、もっと他の道もあったんじゃないの? とか思って。

10円ハゲ作るだとか本当にもっての他なんですけど、もういったいなぜ「普通奨励委員会」会長の自分が山下さんの髪の毛を剃らねばならないのかと思って、しかも若木くるみのために! 若木くるみ当人の手で!! もう何がなんだかわからずアイデンティティが崩壊した。

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そんなうれしそうな顔しないで! と思います。いつ見ても。

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震えながら剃りあげた10円ハゲ(実際は500円玉相当の大きさ)に、自分の顔を描き入れます。

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口を尖らせているのは、似顔絵と自分とが似るよう、願いながら描くためです。

f:id:kurumi-zenzo2014:20140904110051j:plain口よ尖れ、口よ尖れ

f:id:kurumi-zenzo2014:20140904121458j:plain見守るギャラリー。

f:id:kurumi-zenzo2014:20140904112415j:plainできた。

 

 

わたしの頭を撫でていたわる山下さん。

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もうわたしはこの時、抑えきれない激情に駆られて地に伏せって口から濁音をほとばしらせていたのですが、あまりにも平常心を失っていたためにいつ嗚咽したのかの記憶も定かではない。はさみを入れたあとなのか剃刀を入れたあとなのかペンを入れたあとなのか、それとも諸々の最中だったのか。

一応、今日のこの一日だってひとつの作品なのに、パフォーマンス中に自分がこんなにコントロールがきかなくなるとは思いませんでした。

お客さんのまなざしが本当にあたたかくて、ごめんなさいと思いました。

 

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10円ハゲに貼るガムテには、山下さん自身がわたしの顔を描いてくれました。

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ってことはわたしは自分の後頭部に貼るガムテに、やはり自分で山下さんの顔を描いたのだと思うのですが、山下さんに顔を描いてもらったことも、自分の手で顔を描いたことも、写真を見ても記憶が全く蘇りません。

f:id:kurumi-zenzo2014:20140904112643j:plain山下さんによる自画像

f:id:kurumi-zenzo2014:20140904112716j:plain手のひらに貼られたガムテに、わたしが山下さんの顔を描いているところ?

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記憶にない。

 

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それぞれの後頭部に、互いの顔のガムテープを貼ったら、準備完了です。

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ガムテハゲを後ろ髪でじょうずに隠して、

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ガムテと後ろ髪とをいっしょにつかんで、

せーの、後ろ髪!!

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ひかれー!!

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な!!

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い!!!!!

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 後ろ髪、ひかれませんでした。

 

 

まだこれで終わりじゃないんです、これからもまだ後ろ髪ひいてくださった方々がたくさんいまして、……次の更新は…明日かな…。

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番外編

10円ハゲでもお仕事にいそしむ山下さん。

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---------本日の学芸員赤ペン----------------------------------------------------------------

 

今日は薄っぺらな言葉を使ういつもの私がお送りします。

最終日の日記の回想3から引っ張り続けた私の後ろ髪ネタ。

ようやくはさみと剃刀が入りました。

 

私は朝から静かに張り切っていたし、スタッフにもギリギリまで言わなかったし、もちろんお客さんにも内緒だったし、くるみちゃんも自分のことより緊張してる雰囲気で真剣にショウアップしてくれようとしていました。

制作道場の最終日を飾れるなら、後ろ髪を剃るくらい喜びでこそあれ、何の支障もない。

・・・というのはうそです。「社会人として支障のない範囲で」なら何の支障もない。微妙な思い切りですみません。

しかしこの、小さいながらもちょっとした崖から飛ばないといけない行為が、「後ろ髪ひかれない」に秘かに真剣さをプラスしたと思うし、ここにとある決意があるということをリアルに伝えることになったのではないでしょうか。

 

友人はじめ、お客さんたちに、私の小さな決意を見てもらえたのがうれしかったし、くるみちゃんを泣かせたのもうれしかったな。そして、写真の中の私がとても晴れやかな顔をしているのもうれしかったな。

 

後ろに小さな顔が出来てから、私は不思議な全能感に包まれていました。全能というより選ばれたって感じかな。

「こう見えて私、実は後ろに顔があるんです。」

ちょうど妊娠初期の感じに良く似ていると思いました。まだお腹は全然目立たず、外から見ただけでは妊娠しているってわからないけど、「実は私、お腹に小さな人がいます」みたいな、特別な人になった気持ち。

くるみちゃんはそんな感情「信じられない!」と叫んでいましたが、後頭部に子を孕んだ私は、小さなジョリジョリを時々触ってはその存在を確かめ、一人優越感に浸るのでした。

いつかはこれが伸びてなくなってしまうことを小さく恐れながら。

 

坂本善三美術館 学芸員 山下弘子