中学生ワークショップ うらの顔⑤ 8月19日
今日のワークショップは参加人数3人でした。
16人の回があったことを思うと、時間はありすぎるぐらいたっぷりあります。
顔合わせの、挨拶をした時もみんなとても感じがよかったし、最初からリラックスして進められました。
自画像の時間も、わたしの無駄話につき合いながらも描く手は止めず、真剣に取り組んでくれています。歯を描いた生徒っていままでいたかなあと感心していると、歯茎まで克明に描いてくれていて参りました。
気持ちのゆとりもあって、引率の杉先生にもワークショップに初めて参加していただきました。わたしが慣れた手つきで「うらの顔」を描くよりもずっとリアリティのあるお手本になると見込んだから、というのが表向きの理由です。
杉先生は、以前ワークショップ引率中に男子学生から「先生は髪の毛剃らんと? 剃ればいいっちゃにー(方言適当)」と囃され、「先生お嫁に行きたいから…」…って、ちょっとー! 聞こえてますよ!!
やさしい先生は途中でわたしの存在に気づいてやばいと我に返ったらしく、肝心なところをすっかり口に出してしまってからムグッと言葉を飲み込まれ、その感じがまた、ザ、失言! でした。後の祭り。もう戻れないんだから、過ちに気づいた瞬間に「あっくるみちゃん!!」ってせめて笑ってくれればいいものを、中学生の前で腫れ物に触るようなデリケートな扱いをしてきて残酷でした。
そこで、目には目をと思って、笑い者要員として先生に「うらの顔」描きを無茶ぶりしたところ、それがまったく付け入る隙のない完璧な仕上がりで、仇を仇で100倍返しされた気持ちです。
今日の中学生の皆さんは取り組み方も作品も非の打ち所なく素晴らしかったのに、圧倒的な画力を誇る杉先生の「うらの顔」と「おもての自画像」は最後まで他の追随を許さず、おとなげないことこの上なかった。うらおもてがないなんて…。
中学生厳選写真館
おつかれさまでした!
杉先生、実演もみんなの見本にならなかったし、なんかね〜。うらおもてのない人って、ねえ〜。少なくとも2面ぐらいはないとね〜。深みがないよね〜。
顔が4面あるわたしは「打倒杉」に燃え、ここぞとばかりに中学生相手に自分の優位性を示したのですが、お嫁に行けないのって剃髪のせいではなく、この、意地腐った性根の問題では…。根深すぎる真実でした。
「行き遅れ 頭髪の有無は 無関係」
あー!!
杉先生の話題ばっかりで肝心の中学生のエピソード全然書けなかった!
悪いのはすべて杉先生の責任です。
たのしかったのにみんな超いいこだったのに中学生ごめんね。
ありがとうございました。
自画像
うらの顔
午後は、キムタク似のスタッフ江藤さんの太極拳仲間がいらしてくださいました。
江藤さんも「うらの顔」に挑まれ、初体験らしからぬ描きっぷりを見せてくださったのですが、けれどもわたしは江藤さんの豊かな胸の谷間に気をとられてちっとも集中できませんでした。
谷間ショット撮れず
しかも出来上がった顔は全然キムタクに似ておらずがっかりだった。
その後、ぜひ書いておきたいお客さんもお越しくださったのですが、「また来ます」とおっしゃった言葉を信じて今は書かない。必ずまた来てください!
目が3つ
夜には江藤さんが、おいしすぎておいしいとしか形容できない絶品、レバニラ炒めをかごいっぱいに持って来てくださって、山下さんに決して聞かれてはいけないトークで夜更けまで盛り上がりました。
旨い飯と巨乳と悪口ってこれ以上甘美な取り合わせはなかろうと思われます。
おかげで日記の更新が遅くなりました。
追記:山下さんの赤ペンで言及されているお姉さんの作品はこちらです。赤ペンを読んでから読んでください。
後ろ手に、像を結ぼうとすればするほどあかん場所に迷いこんでしまう、お姉さんの意識と身体との攻防は本当に見ものでした。赤いペンのせいかもしれませんが、リストカットみたいなタッチで刻まれていく線も凄絶でした。前の鏡に写るお姉さんの和やかな笑顔と、後ろの鏡に出来ていくお姉さんの傷だらけのうらの顔との、緊密なコミュニケーションは忘れられません。
ありがとうございました。
(ルーブルを引き合いに出されていたのは、「4日前(!)にルーブル行ってきた。」ことからです。4日前ルーブルにいて今小国にいる人って他にいる? と思いました。東京の友人が「遠くて行けない」とか言っていますが、軟弱だ)
-------本日の学芸員赤ペン-------------------------------------------------------------------------------------------------
今日の中学生のがんばりはすごかった。
前回の中学生ワークショップの午後の部に、大人のみなさんが裏の顔作りに挑戦したところ、人並みはずれてものすごく苦労して描かれた方がいらっしゃったのですが、彼女はなかなか描くコツがつかめなくても全く全くまっっっったく諦めず、「あれ???」といいながらニコニコと時間をかけて一つの作品を仕上げました。そのあまりの屈託のなさ、自由さに見ている私たちもすっかり見とれて、やいやいと野次を飛ばしながら彼女の生み出す奇跡の線に釘付けになったのでした。彼女のがんばりは完全にエンターテイメントでした。見ごたえあった。素晴らしかった。そして制作道場のことを「ルーブル美術館よりおもしろい」と言ってくれてありがとう。
中学生のみんなもそんな風に諦めずにめげずに照れずに描くといいよねーと話していたところ、今日の男子3人はまさにそんな姿を見せてくれました。表の自画像を描くところでも小さなひげまで描く徹底振り。人数が少なかったから一人ずつ挑戦した裏の顔作りでは、思い通りにならない線を思い通りになるまで線を重ね続けたり、左右が均等に動かせず顔の造詣としてはかなり歪んでいるのに歯まで描きこむこだわりを見せたり、みんなが描くのを止めたくないほど面白がってくれていることがよく伝わりました。今目の前のことを十全に楽しむって大事だね。すみずみまで味わわないと損だね。教えてくれてありがとう。
坂本善三美術館 学芸員 山下弘子