後ろ髪ひかれない 8月31日 回想3

よかった、今日は雨じゃないみたい。

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最終日の朝、庭砂利を整える山下さんの後ろ姿です。

 

今年の8月は、雨がずっと降っていました。

山下さんには絶対言うなって口止めされていたけれど客足はやっぱり鈍くて、もともとわたしの集客力の無さには定評があるし、お客さんが少ないことに対する肩身の狭さをわたしはきゅうきゅうと感じ続けていました。

 

ツイッターとかフェイスブックとかミクシとか。 苦手とか言って避けている場合では、いよいよないんでないか。とか。

ていうかやったところでそもそも友だちいないけど。とか。

ここのブログのコメント欄はせめて残しておくべきだったのか、とか。でもコメント欄開設しました! って言って何も来なかったらほんとに立ち直れないから、そういうおぞましい試練を課すのやめようよ。とか。

 

つまらぬことで頭を悩ませて、愚かなり。

 

そう思われるかもしれませんが、当事者としては全然つまらぬことではないっていうか、お客さんの反応あっての制作道場ですから。つい反響を気にしてしまうのでした。

 

…気にしすぎたな。

 

2年目に入って、こちらからは見えないけれど制作道場を見てくれている人がきっといると思ってしまって、彼らにどう思われるだろう、どうしたら良い評価をもらえるだろうかとあくせくしてしまいました。それが結果的に縮こまった表現に陥っていったのだと思う。

 

もっと身もふたもないことを言うと、賢いって思われたくなっちゃったんですよ! バカのくせに、一生懸命バカだと思われないように振る舞っていた。…愚かなり。

例えば、先ほど出てきた「あくせく」の使い方だって多分ちょっとおかしいじゃないですか。でも、おかしいってことはうっすらわかるけど、ふさわしい表現は見当たらない。そこで、1時間も考えた末に姉に電話して聞くとか、結局自分に操れる平易な言い回しに置き換えるとか、そうやって慎重にやっていたら、そりゃあ鮮度もインパクトも爆発もなくなるでしょうよ、と今となってはそう思う。

 

「あくせく」に象徴されるような保守的なためらいが今年の制作道場の一事が万事においてあって、って、ああっ! 「一事が万事」の用法も間違ってるかも!!

加えて、「あんたその、言葉の過ち披露も計算でやってるでしょ。」というつっこみもあるわけです。「『間違っていることを知っている』って結局バカじゃないアピールがしたいんでしょ。」っていう。

 

ちがうんですよ。何が正しくて何が間違っているかを熟考するようになってしまったということが言いたいんです。

去年の30日間があって、今年も30日間をやり仰せようというときに、勢いだけでいいや! ええい! とは言えなくなってしまった。

 

さらに困ったことにわたしはそんな自分を肯定できなかった。

わたしは子どもらしい子どもが全然好きではなくて、それは無邪気さの演出具合が自分の手口とかぶるからなのですが、なんか…今年はガキどもをけっこうかわいく思えてしまって…。自分から毒素が抜けつつあることをいとわしく感じた。もうおもしろいこととか言えないよ、と思った。無理があった、もう、本当に、無理があったんです…。

 

わたしが去年やっていたのは、何も知らない子どもが勢いだけで「どうだどうだ!」ってアートとたわむれるようなことだったと思うんです。それを、子ども好きのやさしい皆さんは「おもしろいねおもしろいね」ってちやほやしてくださって、それで図にのって2年目やっちゃったんですけど。

 

…今年も子どものままいられるっていう、図々しい自信があったから始めた、「今年も若木くるみの制作道場」。

でも、去年みたいにはできなかった。

去年みたいにはできないんだなーって感じ続けた30日間でした。

去年のダイジェスト映像が会場でずっとループされていたのですが、まばゆいこの光景はなんなのかなあと思って、わたしは惚けたように画面に見とれ続けました。

今、もう昂っちゃって、キーボードを打つ手が震えるぐらい、悔しくて悔しくて耐えられない。

わたしは去年を超えられなかった。限界だったんだって。でも認めたくない。

 

どうかこれを「成長」などという未来ある単語で済ませてくれるなと思う。

制作道場2年目は、わたしの老化の記録でした。

 

 

最終日の朝、美術館へ向かう車の中で、山下さんが、「ゆうべ思いついたことがあるんだけど」と切り出されて、なんで今なのかなと思いました。思いついたときにメールで伝えてくれたらいいじゃないですか。

わくわくしながら続きを待っていたら、

「わたしも後ろ髪、剃ろうと思うの。」と。

「わたしも、後ろ髪、ひかれたくなくなりたいんだ。」って。

 

わたしは助手席で、山下さんの運転されている右側をとっさに見られませんでした。

 

「………………」

 

「…………………ひろこ…」って呼びそうになりました呼びませんでしたが。

 

 

わたしは今まで体を張って許されようとしてきたけど、体張るって周りの人にとっては必ずしも気分のあがるものではないんだと思った。そこまでしないでくださいと思いました。でもそう言ったら「いや、わたしとくるみちゃんとでは立場が違うから。みんなは体張るくるみちゃんを見たいと思うよ。もっとやれもっとやれ、だよ。」とのことで した。……そっか。

 

つづく。

 

--------本日の学芸員赤ペン(改)------------------------------------------------------------------------

 

ああ、来館者数のこと言っちゃったか。

弱小美術館の弱みでもあるお客さんの数。今年少なかったのは、何もくるみちゃんのせいじゃなくて、6月くらいからずっと低迷気味なのです。どうしてだろう。消費税のせいか?他館のみなさんいかがですか。

あーあ、こんなところでこんなことばらす羽目になっちゃったじゃない。どうしてくれんのさ。

 

でも実際、制作道場を見に来て、ワーワー喜んでくださるお客さんの数が、モチベーションに大きく影響することは確かなのです。普通の展覧会ならともかく、制作道場の場合、お客さんの参加を見込んだプランも多いし、くるみちゃんが受けた日々のボディブローはみんなが思う以上にダメージを残していたのではないだろうかと思います。

 

くるみちゃんの日記ににじみ出る今年の道場への思い、切なく読んでいますが、私も制作道場の2年目について思うこと、去年との違いについて思うこと、くるみちゃんと私との間に流れたものなど、言いたいことや言うべきことは山のようにあります。

何といっても特別な2年間だったので、これらが私に刻み付けたものは「耳なし芳二」の文字どころの比ではありません。くるみちゃんにとってもそうだと思います。多分、くるみちゃんも私も語りたいはず。語って語って吐き出さなくては消化できない、飲み込んだままの大きな塊。

その辺は最後にじっくり語らせていただきます。

 

・・・とかできるのかな。おおきな風呂敷。

 

今年の制作道場の最終日を迎えるにあたり、もちろん寂しい思いもありました。でもあっという間の30日間でありながら、私にはやっとやっとたどり着いた30日目でもありました。くるみちゃんもそうだったんじゃないかな。もがきもがきしながら1日1日をのりこえて積み重ねて、いよいよ明日に迫った最終日。

その名も「後ろ髪ひかれない」。このタイトルに込められたくるみちゃんの決意を考えると、そして、今年の30日間をやりきったという実感と共に終わるためには、私は何ができるだろう。くるみちゃんに何をしてあげられるだろう。

 

そんなときに頭をよぎったのが、くるみちゃんから聞かされたたくさんのプランの中の一つ、「お客さんに十円ハゲをつくって顔を描く」というプランです。

これなら私も後ろ髪ひかれなくできるんじゃない?

私も決意しめしたい!

私も後ろ髪ひかれたくなくなりたい!

 

夜中に別の作品の赤ペンを書きながら思いつきました。でもでも、これを夜中にクマ印の無料メール(メール?)で相談したりしたら、ドン引きされるかもしれないし。何しろ髪の毛切るってちょっと重いし。作品に勝手に入り込むわけだし。でもきっとインパクトあるし。みんなびっくりすると思うし。くるみちゃんも驚いてくれるんじゃないかな。

こ、これはきっと、直接顔見てプレゼン(というほどではないが)したほうがいいよね・・・。

 

そうして、最終日朝の車中プレゼンとなったのです。思い返せば今年の制作道場の初日のプランも、初日2日前に福岡まで迎えに行ったときの車中で初めてくるみちゃんから聞かされたのでした。顔見て話したほうがいいと思ってって。

車中プレゼンに始まり車中プレゼンに終わる2014年の制作道場

 

次回赤ペンは、私のはらわたについで毛髪を乗せてお送りする!のかな。

 

坂本善三美術館 学芸員 山下弘子

後ろ髪ひかれない 8月31日 回想2

小国ゆかりの作家、ズベさんにひいてもらった後ろ髪。

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後ろに髪の毛を置き去りにするというアイディアは、もともとはマラソン用に、スピード練習の必要性に迫られて思いついたものです。

「ダッシュのスピードが速すぎて、髪が取り残されちゃうんです…」

そんなプレゼンを持ちかけるたび、決まってぽかんとされていました。

 

自分の走りの特徴を述べるときに、後半も粘れると言うと聞こえはいいですが、序盤のスピードがわたしにはなさすぎる。

体重が重いせいで、スタミナはあってもスピードが皆無なのです。

前半の出遅れが響いて関門にひっかかるという苦い経験を何度も重ねてきました。

 

小国ダービーと同じく、スピード練習目的でひり出したこの企画は、当初はお客さん巻き込み作品ではありませんでした。

しかし、髪の毛が勝手に置いてけぼりにされる妄想が周囲に理解されず、ボツ案の憂き目を見そうなことに焦って、じゃあお客さんに髪をつかんでもらえばたのしくなるかなあ? やけくそで考え始めたのでした。

 

溺れる者は藁をもつかむ。

慣用句通りに行くと、「お客さん=藁」、「藁のようにとるに足らないもの」ということになってしまいますが、もうこの時は追いつめられていて、作品にできるならあとはどうでもいい、お客さんも正直どうでもいい、利用できるものはなんでも利用する。

そんなすさんだ気持ちでいました。

 

一企画でも多くストックしておかなくては。

 

もう人間性は二の次、三の次というか、明日のアイディアが何もない、という状況がもう何より恐怖で、その他のことがついおろそかになっていたことは否めません。

とにかくめちゃくちゃ焦っていた。

 

制作道場は一日しかチャンスがありません。

あとから、あの作品もっとこうすれば良かった、こっちの切り口でいけば良かった、っていう後悔を絶対したくない。すべての可能性を最高のかたちで終わらせないといけない。ずっと口の中が乾いていました。

 

どうせお客さんに加わってもらうなら、ひとりひとりの個性がちゃんと見えるやり方にしたいよな…。

取り残される髪(カツラ)の内側に、何か皮膚って設定のシートを用意したら、そこに顔描いてもらえるな、並べて展示もできるな。

わたしの後ろの顔はおなじみだけど、テープ貼ったことはないし、いいかもな。

後ろの髪は、あ、後ろの髪ってことは、……はっ、…「後ろ髪」…? 

…う、う、う、後ろ髪ひかれない!?

 

来た!

と思いました。これ、最終日企画でいけやしないか。

最終日、これしかないだろう。

後ろ髪ひかれたくない。

今年は。

 

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今年のはじめての休館日(8月4日)に、ズベさんのアトリエまで走って行ったことがあって、…移動時間13時間、滞在時間1時間の不思議スケジュールで。

小国とズベさんのアトリエとは徒歩だととても遠く、目的地までの地図を握りしめ、次はいつ給水できるのかと怯え、土砂降りに会い、坂道をとぼとぼ歩き、日没を恐れながら、しかし一歩一歩重ねるしか旅を終わらせる方法はなかった。(とか言って途中見知らぬ女性の車にピックアップされて命拾いしたりもしてるのですが…。)

 

そうして長く険しい道のりを消化している最中に少しずつまとまっていったアイディアが、「後ろ髪ひかれない」だったのでした。

 

ズベさんに出迎えてもらえて、目的地まで辿り着いた安堵でやっと緊張をほどき、やっぱり大きな作品いいなあ、圧倒されるなあ…。息を深々と吐きました。ズベさんの、制作にかけるまっすぐな愛情とか熱情とか、ぐらぐら煮えたぎるマグマみたいなその眼差しと対峙すると、わたしは我が身が不甲斐なく、今年は制作道場あんまりうまくいってない気がするのとか、山下さんをなかなか笑わせられないのとか、そういうことまで話した。

上手に出来ない。わたしには出来ない。

涙に沈む中で、それでもなんとかしなくてはと、もがくように出てきた「後ろ髪ひかれない」。生まれ出ずる「後ろ髪ひかれない」。

 

自分もアイディアも、いつ墜落してもおかしくなかった状態から、すんでのところで踏みとどまれた8月4日の休館日は、これからだってぐらつきながらやってやるんだという、厳かな決意が芽吹いた一日でもありました。

 

「後ろ髪ひかれな」くなる日を目指して、わたしはあの日よろよろと小国まで帰ってきました。

足を止めなければ、自分の意志とは無関係に、必ず終わりが訪れることをわたしは本当は知っていた。

闇と光とになすすべもなく呑まれながら、この一寸先の闇はいずれは一寸後に、二寸先に隠れている光もやがては一寸後、二寸後にちゃんと遠ざかっていくことを、わたしはずっと、本当はわかっていたんじゃないのと思います。

 

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 ズベさん、ありがとうございました。

 

 

日記まだ続きます。!

 

----------本日の学芸員赤ペン----------------------------------------------------------

 

後ろ髪が取り残されるプラン、プレゼンしてもぽかんとされて・・・と書いてありますが、例によって発想と具現化の間に深遠な地割れが横たわっていましたので、最初に聞いたときはまずはぽかんとなります。初めは、後ろ髪がゴムで引っ張られて走るとびよーんと離れるとか、そんなようなことを考えていたと思いますが、「じゃあそのゴムどこに着けるの?」とか「どうやって固定すんの?」とかそんなことを話しているうちに、流れていった企画だと思っていました。

 

ところが、起死回生の最終日プランとして復活。

 

最終日プランとして復活してきたプレゼンは、一目で(実際には一聞きで)「!」と思いました。最終日、いけるんじゃないかな。思いがけず、感動作品になるんじゃないかな。これ以外ないんじゃないかなと確信。

 

このアイディアが、ズベさん(こと、鉄の作家藤本高廣さん。くるみちゃんとズベさんは福山アートウォーク2012以来の知り合い)のアトリエに走っていったときに思いついたものだったとは知りませんでした。

くるみちゃんがズベさんのところに行った時のことはよく覚えています。休館日前日、ちょうど小国町内で開かれていたズベさんの展覧会を夕方随分遅くなってから見に行って、ズベさんのアトリエに、明日の休館日に走って行くと言い出したのです。道も何も知らないのに。距離にして片道約50キロ離れてるのに。

 

私は明日福岡いかなきゃだから送っていけないよ。

道わかんないでしょ。

うーん、道説明するのも難しいし。

途中は山道だから人通りとかないよ。

道聞く人もいないよ。

 

通り一遍の反対はしたものの、ナイキの耳には届かないらしい。

無謀とも思える100キロ走は、途中土砂降りの中車に乗せてくれた小国の方の親切などに救われて、無事に帰オグ(小国に帰る)し、大変だったけど「行ってよかった」と言っていました。道中のエピソードは聞いてたけど、途中でこんなことがあってたなんて。

 

ズベさんのところに行くと言い出した時、くるみちゃんはなんとなく、制作のための糸口を求めてもがいているような感じがしました。なかなか火がつかない制作を爆発させるための着火剤を、当てもないのにとにかくどこかに求めているような感じ。

それを、私はその時確かに感じていたんです。私の胸を横切った。確かに。はっきりと。

 

でもそれを掬い取ってはいなかった。

どうして掬い取らなかったんだろう。

 

「どうかな、私たち大丈夫よね、うまくいってるよね。」

今年の制作道場が始まってからたびたび口に出してきました。

去年は決して出てこなかったセリフ。

今思えば、これを口にしている時点で大丈夫ではない。

当時、始まって1週間の制作道場について、二人とも同じように「大丈夫よね・・・大丈夫かな・・・」と思っていたのに、くるみちゃんに一人でもがかせて、50キロ離れた人のところで「山下さんが笑ってくれない」と話させていたことを考えると、私は胸が苦しくて苦しくて胃が口から出てきそうになる。

私は隣にいたのに。

わたしは、どうして、きづけなかったのだろう。

 

誤解しないでいただきたいのですが、私たちは決して仮面夫婦だったわけでもなく、ツンケン険悪ムードだったわけでもなく、毎日仲良く過ごしていたし、去年と違ってスマホユーザーになった私たちはいつもクマのキャラクターの無料メール(メールなのか?)で夜も休みの日も会話していたし、今年のくるみちゃんの宿はうちの隣だったので、一緒に温泉に行ったり、果物のおすそ分けをしたり、むしろ去年よりやり取りの数は多かったかもしれません。

 

でもそんなことじゃないんだよな。

 

このままではうっかり日記が終わる前に総括してしまいそうになるので、私のはらわたを乗せて次の赤ペンへ続く!

 

 

坂本善三美術館 学芸員 山下弘子

 

後ろ髪ひかれない 8月31日 回想1

わたしの

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後ろ髪。

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この日用意したのは、虚空に漂う後ろ髪と、

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幅広のガムテープ。(右)

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ついにやってきた最終日、今日の企画は「後ろ髪ひかれない」。

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皆にわたしの後ろ髪をひいていただこうという、よりによってかなりいい気な企画なのですが、肝心の後ろ髪登場の前に、お客さんにはさらなるややこしいコミュニケーションを課すことになりました。

 

何も知らずに会場に来て、わたしと対面させられ、右手にはペンを、左の手のひらにはガムテープを貼付けられ、「このガムテープがわたしの後頭部の皮膚です。」と重々しく言い渡されたお客さんの気持ちになって、以下の説明についてきてください。

 

特別表情豊かだった宮崎さんの回をモデルに、いきますね。

 

これは、わたしの後頭部の皮膚です。

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このガムテープに、わたしの目、鼻、口、眉などのパーツを描いてください。

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描かれている間、わたしは自分の後頭部に、宮崎さんの顔を描きますね。

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描けました? わたしは今、宮崎さんの真一文字に結んだ口を描いています。

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「ぼくもそろそろ描き上がります。」

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ありがとうございます、神秘的な顔ですね。わたしよりむしろ宮崎さん似ですね。

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それではその神秘的なガムテープを、宮崎さんの顔が描いてあるわたしの頭皮(写真なし)に貼付けてください。べったり。空気が入らないように、しっかり。

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これで準備完了です。

それでは後ろ髪スポットへ移動しましょう。

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先ほど貼付けたガムテープと、後ろ髪とを、一緒にぎゅっとつかんでいてください。

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何があっても離さないでくださいね。

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いきますよ。

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後ろ髪! ひかれな

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い!!

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!!!

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宮崎さん宮崎さん!

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お手元に残った、ガムテの裏!! 見てみてください。

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!!

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うつったかな。

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頭皮に描いていた宮崎さんの顔が、ガムテの粘着面に転写されて、残るの!

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これこれ。

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どれどれ。

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ちょっと見えづらいですね!

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というわけで、わかりやすい方でもう一度!

小国在住のアーティスト、岡山さん。

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わたしは膝元の合わせ鏡で自分の後頭部を確認しながら岡山さんの顔を描いています。

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岡山さんはわたしの目を大きく美化して描いてくださっています。

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わたしの頭皮の岡山さんの顔の上に、描き上げたガムテープを重ねます。

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 テープのはじっこと、後ろ髪と、ぎゅって、両方持ちましたね?

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それでは! 岡山さんに、後ろ髪ひかれな

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い!!

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……。

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残った?

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残った!

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わたしは後ろ髪ひかれないことより、顔がくっつくかどうかに興味津々でした。

 

そんなだから最終日が終わったのに後ろ髪ひかれちゃってて! 今!!

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昨晩九州を発って今朝しばらくぶりに自宅に帰ってきたのですが、後ろ髪ひかれまくりながら、ぼーっと最終日の一日を、制作道場の30日間を、繰り返し繰り返し反芻しています。 

 

日記更新遅くなってすみませんでした。

載せたい写真がまだたくさん、書かなくてはならない出来事もまだたくさんです。

クライマックスをどこに持っていけばいいのか、構成がまとまりません。

 

もうあと数回、最終日の「後ろ髪ひかれない」、続けさせてください。

一旦アップ!

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とか言っているうちに美術館公式サイトのほうで充実した記事が既にアップされていて、わたしがもたもたしている間に置いて行かれてしまっています…。

どうぞご覧ください。

http://blog.sakamotozenzo.com/?eid=1306233

 

---------本日の学芸員赤ペン---------------------------------------------------------

 

最終日を過ぎてしまった今、皆さんいかがお過ごしですか。

お尋ねするまでもなく、皆さんにはいつもの日常が流れていることですよね。

私は今年の制作道場30日間が終わり、日に日に日に日に後ろ髪をひかれてひかれていますが、それを気のせいだということにして赤ペンを書こうと思います。

 

最終日のプラン、「後ろ髪ひかれない」。

宙に浮いた髪の毛の異様。

道具立てはそれだけ。

最終日にぴったりの意味深なタイトルが何を物語るのか、くるみちゃんの日記が徐々に明らかにしてくれることでしょう。

それにしても今日の日記は、宮崎さんのもはや顔芸と言えるほどの素晴らしく豊かな、挿絵として大変正しい表情に目を奪われて、一回ではやることの説明が入ってきませんね。某紙の記者ながら永遠の部活の後輩的雰囲気を持つ宮崎さんは、「ツイッターで見たから」「今日のは見ときたいと思って」などと、今年もたびたび足を運んでくれました。ありがとう!後輩!人生の。

そして、説明として正しい表情のアーティスト、岡山さん。さすがです。アーティスト的配慮。か?

 

そしてみなさん、1枚目の写真で、くるみちゃんの後ろの前髪が、随分上まで上がっていることにお気づきでしょうか。

最終日にくるみちゃんの頭皮として使用したガムテープは、普通のやつの倍くらいある、強粘着タイプ。

最終日前日に試しにやってみたところ、首のあたりの皮膚が2回で真っ赤にひりひりに。とても1日中やることは無理だということで、多少でも粘着の抵抗が弱まるように、前髪をより上のほうでぱっつんとやることになったのです。

ひりひりに負けずがんばれ。

最終日はまだ長い。

 

坂本善三美術館 学芸員 山下弘子

セルフアンコール企画 お弔い 9月1日

後ろ髪引かれないの日記まだ書けずですみません。

今日か明日には必ず…。

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最終日から一夜明け、後片付けと荷造りをしました。

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畳、もうちょっとあとでもいいかな? 

ビニールテープを先陣切って剥がせなくて、思い切ってだれかが手を入れてくれないか、ためらっていた畳のマンガも、ベロっと始めてしまえばあとはたのしい作業でした。

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f:id:kurumi-zenzo2014:20140902112753j:plainかかったよー

f:id:kurumi-zenzo2014:20140902112740j:plain昆布!

 

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黙々と作業を進める中、気づけばスタッフの梅木さんがしゅんしゅん鼻をすすっていて、どうしよう、そっとしておいたほうがいいのかな? 

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しばらくは息を殺して神妙な顔をしてたのですが、ついふざけたくなってしまって、「梅木さん、泣いていらっしゃるのですか。」

にやつきながら顔を覗き込んで、「もうー!」と叩かれました。

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さいごの夏休み、大会が終わったあとの部活みたいに、みんなやさしい目で、充満しているのは思いやりばっかりで、けだるいじゃれあいでした。

 

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用済みになって行き場のない成果品をまとめて、きちんと手を合わせて拝むことにしました。

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ろうそくと線香を用意しました。

さっきまでの晴天が今は小雨になっていて、しめやかにお弔いがとり行われます。

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どうもありがとうございました。

だいじに思っています。

 

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昨日、少し髪を切った山下さんと毛刺交換の儀。

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「くるみちゃん物の扱いがほんとに雑だから、すぐなくしそうだよね。なくさないでね。」と念を押す山下さんでしたが、わたしは、なくすくらいならまだいいと思った。

あれ? これなんだろう。 

山下さんの毛髪だった記憶自体を失って、「そうそうわたしこの時茶髪だったんですよねー」とか言い出しそうでした。

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-------本日の学芸員赤ペン/ベリーショート---------------------------------------------------------------

セルフアンコール。

頼まれてもいないところに作家の制作にかける自主性がにじみ出ていますね。

自称。みたいな。

なーむー。

 

交換いただいた毛刺、私のデスクの引き出しに大切に保管されています。

大きな女の子のクローン作れるかな。

 

坂本善三美術館 学芸員 山下弘子

 

後ろ髪ひかれない 8月31日

最終日です。

 

 

最終日終わりました。

(日記は後日。)

 

閉館後、打ち上げに行くわけでもなく(お店が予約とれずで。)、いつもはもう帰っている時間をとっくに過ぎてもみんな、事務仕事してみたり、差し入れを貪ったり、あとかたづけとか、会場の記録写真とったりとか、制作道場グッズで悪ふざけしたりとか、いつまでもだらだらげらげら笑い合った。

 

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けれどもわたしの目は全然、笑ってはいなかったように思う。

決着のついた別れ話を今さらなかったことにするみたいに、何食わぬ顔でおどけてみせて、さらさら滑り落ちる時間に抗った。

ばかみたいに狂気じみた笑いの発作に苦しくトイレに駆け込むと、自分の殺気立った目が鏡に反射した。大きくしゃくりあげて、鼻をかんだ。男泣きに泣いた。

 

夏が終わって、夜の溜まりに自分の後頭部がほの白く残った。

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--------本日の学芸員赤ペン-----------------------------------------------------------

若木くるみの制作道場2014、無事完走いたしました。

応援本当にありがとうございました。

 

くるみちゃんに拍手。

応援してくださった皆さんに拍手。

+zenスタッフに拍手。

 

赤ペンはまた後日。

制作道場、ゴールです。

 

坂本善三美術館 学芸員 山下弘子

顔リンピック 8月30日

 

オリンピック種目のひとつ、近代五種競技。

近代五種競技(きんだいごしゅきょうぎ、英語:modern pentathlon)は、1人で射撃フェンシング水泳馬術ランニングの5競技をこなし、順位を決める複合競技のことである。

 

射撃、フェンシング、水泳、馬術、ランニング!

 

自分にとってはランニング以外全然馴染みのない妙な取り合わせのこれら五種を、わたしのたくさんの顔を使って、一挙、やっちまいます! 

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 その名も、顔リンピック。

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(絵:武内明子)

 

大声援を受けて、いざ!

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射撃!

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カッパの的に向かって水鉄砲で、連射!

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命中!

 

次!

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フェンシング。

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手に持つピックは傘の柄とお椀で作りました。

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f:id:kurumi-zenzo2014:20140831053517j:plainつん

f:id:kurumi-zenzo2014:20140831054046j:plainつん

 

ピック先端につっこんだすすきの葉をひゅんひゅんしならせて、相手役の馬を攻撃します。

f:id:kurumi-zenzo2014:20140831084136j:plainピシッ

ばさしーーー!!!!!(馬刺、熊本の郷土料理)

 

笑いが起きたら次! 

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刺激したばかりの暴れ馬を、どうどうどう、どうどうどう。

頭をなでていなす。

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位置について、

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ヒヒーン!

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正確さ30点

活発さ90点

美しさ75点

馬らしさ満点

 

次!

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水泳。

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ようい

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f:id:kurumi-zenzo2014:20140831092435j:plainずるり

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参戦してきた猛者にぐんぐん水をあけられ惨敗。

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敗戦をひきずっている暇はありません。

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締めはランニング。

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行きますよー!

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スタート!

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ワークショップで作った中学生のお面の面々を率いて走ります。

最終ランナーを務めてくださるのは美術教師の杉先生。

先生は、初マラソンとなる熊本城マラソン(2月)に先日エントリーされたばかりです。

先生が出るならわたしも出ます! 

美術館が始まる前の早朝、ふたり待ち合わせて一緒にジョギング練習に励んできました。そしたらエントリー締切はなんと昨日までだったそうで、わたしはついに応募しそびれたのでした…。先生…ごめんなさい…。

叶わなかった熊本城マラソンでの共走が今、この晴れ舞台で実現です!

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今度一緒にこのスタイルで本物のマラソンを走りましょうね。

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朝練の甲斐あってふたりは息ぴったりでした(あくまで主観)。

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拍手!

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杉先生ありがとうございました!

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後には、山下さん、竹口さん(ゲスト赤ペン)、パンいちの競泳少年も加わって、豪華メンバーでのマラソンを試みましたが、各々を結んだ靴ひもが互いの足をひっぱり合う、最低のレースでした。

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山下さんが背後からおもいっきりわたしの腰にすがりついてきて、重い! 後続ランナー、ランナーらしくちゃんと腕振りしてください!!

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杉先生との間に無言のうちに流れていた、「お互いがんばろうね、マラソン!」という無垢で爽やかなエール交換に、邪魔が入って胸くそ悪かったです。

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しかしそんなどうしようもない走りでも、ゴールの瞬間は気持ちがひとつに寄り添って、

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バンザイ!

 

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おつかれさま!!

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ひゃー

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ハイタッチ!

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一礼!

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中身はどうあれ、ゴールするということが大切ですよね!!

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明日の最終日がコケた時のための伏線を、今、周到に張り巡らせていることに、賢明な読者の皆さんはもうお気づきであろうか。

 

いや、だって、ほんと、ともかくも、ここまで来られたってだけで! 

ゴールできるってだけで、すごいと! 

すごいと思えませんか!! 

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って前もってもっと早くから皆の意識の中に刷り込んどけばよかった。

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一昨日から、なんと町内放送で朝晩、「若木くるみの展覧会が明日までとなりました」などとカウントダウンされるようになって、公共の電波をジャックするとか鬼の山下はやはり恐ろしいと思いました。

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f:id:kurumi-zenzo2014:20140831042223j:plainにゃん

 

---本日の学芸員赤ペン---------

 

完璧に楽しい一日でした。

競技を行ったのはくるみちゃんだけですが(飛び入り参加はありましたけど)、観客の私たちも完全に参加した気分です。すごいな。

くるみちゃんを見に来ていたお客さんだけでなく、何かイベントでもやってるのかとふらりと立ち寄った年配のグループのみなさんも、応援席でメガホン片手に大声で応援してくれました。みんな本当に大喜びの大笑顔。

楽しくなっちゃったた子どもたちは水泳競技に自主参加し(かつ圧勝)、しまいにはくるみちゃん抜きで自分達だけのレースを展開し、もう我慢できずにパンツでプール(砂利)に飛び込み、全身で楽しさを表現してくれました。

美術館の庭では、みんなそれぞれが本当の運動会(五輪ではない)を見に来たみたいにのんびりとくつろぎ、競技が始まったら大声で応援し、子どもらはその辺で遊びながらはしゃぎまわっていました。

くるみちゃんの作品プランは5つの顔でやるオリンピック。でも、その作品を構成していたたくさんのピースには、メガホンのおじさんがあり、パン一の少年があり、子どもを抱っこするお母さんがあり、全然競技なんて見ていない女子たちがあり、お隣の神社の境内から拍手喝さいを送る人があり、馬だと思ってくるみちゃんに吠える犬があり。

これらは直接くるみちゃんが用意したものではないし、会場で偶然生まれたものですが、これらがなければ成立しない作品でした。そしてそれを生み出す力はこの作品が持っていたものです。

「作品」「作品」と言っていますが、くるみちゃんが作り出したものはもはや「作品」というよりも「空間」、あるいは「状況」。現代美術家がよく「空間を作る」などといいますが、そんなインスタレーションやなんかの甘っちょろいものではなく、来た人はもうお祭りかなんかとしか思っていないくらい、突然現われた陸続きの異次元。

庭全体が揺れるように楽しんでいる様子を眺めながら、私はつくづくと、これは実はすごいことが起こっているんじゃないかなと思いました。私たちは当たり前のように立ち会っているけれど、こんなの普通の美術館では出来ないでしょ、と思いました。手前味噌でほめているわけではなく、美術館のロケーション、お客さんとの関係、ゆったりした空気が日常的に土台としてあって、そこにくるみちゃんが絵具をぶちまけたように色を付け、かきまぜ、完全に日常の中にある特別な磁場が現れる。何もかもが受け入れられている、奇跡のような時空でした。

言葉を重ねれば重ねるほど陳腐になるのがもどかしい。でもあの時間あの場所あの人たちとしか立ち現われなかった奇跡は、もう二度と見られないと思えば思うほど私たちの心で輝きを増し、涙の根元を動かします。

本当に、夢だったんじゃないだろうか。楽しかったな。

 

坂本善三美術館 学芸員 山下弘子

真っ赤なお鼻の確認印 8月29日

今年もお客さんから制作道場に使う企画書を募集しました。

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何が作品のヒントになるかわからないからと、喉から手が出るほど欲しかったみなさんのアイディアです。予想外にたくさん寄せていただきました。

なんとしても実現したいと意気込んでいた、あの企画、この企画。

まだあれがある、あいつもまだできていない! 

もう少し肉付けしてから、もう少し寝かせてから、と熟成ボックスに入れておいた魅惑のアイディアたちを置き去りにして、日々はあっという間に過ぎていきました。

 

なんと、もう、あと、3日!!

メリーゴーランとかやってる暇があったら、あの人のあれやればよかった! 

そう思ってももう後の祭りです。

 

残りの企画、どうする。

限られた日にちの中でどれを選択することもできず、やっぱり「確認印」やらなきゃ…、今年も…。

心は決まりました。

 

去年は、正面の顔を使った「確認印」でした。

自分の顔を判にして、企画書に次々お見舞いする、鼻からバタンと倒れこんで激痛に耐える企画です。

 

 

今年の「鼻」と言えば、「耳」……。  

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というわけで、今年は横の顔を企画書でサンドすることにしました。

やっぱり痛い方法で…。

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耳に朱墨をつけて、企画書を貼ったボードに両側から強打される、確認印。

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ビヨーン、バチン! 山下さん大喜び。

 

1セット押印したら、次の企画書に貼り換えてまた繰り返します。

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f:id:kurumi-zenzo2014:20140830084301j:plainボードをセット。

 

企画書と企画書を両脇のスタッフが持つ。

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ゴムがのびきるまで引っ張って、

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3、2、1、

バチン。

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わたしの耳めがけて企画書が突進して来るので、見事紙面に耳のかたちが印されるというわけです。

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次はアップで。

 

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(写真家の友人が撮影に来てくれて画面の明度が一変しました。)

 

去年と違って今年は自分のタイミングで押せないので、実際の痛みよりも、いつ来るか、今来るかと歯を食いしばっているときの、痛みの予感のほうをリアルに感じました。

企画書と向かい合っている顔はわたしの横側のただの絵なので、肝心の企画書の内容をぎっと見据えることもできなくて、ただ、企画書が飛んでくるって思うだけでもう耳が痛い。ほんとは鼻なんですけど、やっぱり耳が痛かったです。

 

 

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制作道場前半はアイディア不足に泣き、後半はアイディアの出過ぎに泣きました。

ゲスト赤ペンの竹口さんによる「駆け込み寺」道場以降、企画を考えるための道筋のようなものがわたしにも少し見えるようになって、コツをつかめた、すごく楽になったと心底よろこびました。でも、並べてみたアイディアを見比べてみるとどれも、いかにも自分から出てきましたって顔をしていて、別に自分から生まれたものにそんな興味ないっていうか…。

「コツをつかむ」って、つまりは「慣れる」ということなんだと気づいて、うなだれるしかなかった。

それが竹口さん言うところの「自分の語り口になる」ということなら、なんか……人には「それのどこが悪いんですか」って言えても、自分に対してはそんなお気楽な慰め言えないものでした。

すごい、わたしは自分のことをすごくかわいいと思っているから採点が辛くなるのだと思った。写真うつりが悪いって騒ぐ女と同じです。自分の何もかもを全然ウキウキ肯定できない。出てきたアイディアを、「これが自分の真の姿」だと受け止められない。

 

企画書に残された赤い耳は、皆が出してくれたアイディアすら斜に受け止める自分のいやしさを恥じて、燃えているようにも見えました。

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もう、やめよっかな…。いろんなところに顔つくるの。

 

今の自分に必要なのは、描き変え可能なたくさんの顔を持つことではなく、まず正面の自分の顔をつかむことなのではないか。

 

…くさいと思われたくはないんですけど。

でもなあ。

くさい自分をくさいと受け止めて、他人さまのアイディアを受け取るのはそれが出来てからでしょと思ってしまったのでした。

 

わたしには、荷が重かったかな。

30日間自問他答。

自答も他答も受け止めきれないまま、超速で横滑りしていった今年の確認印でした。

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---------本日の学芸員赤ペン-----------------------------------------------------------------------------------------

 

今年も募集したお客様からの企画案。

数としては昨年よりずっと多かったと思います。一人で何枚も何枚も書いてくださった方。遠くからメールでアイディアを送って下さった方。中学生のワークショップ時に書いてもらったワークシートも加えると、かなりの数になります。くるみちゃんに何かやらせてみたい、くるみちゃんなら何かやってくれるんじゃないかという期待のこもった企画書から、自分が普段持っている関心事をくるみちゃんを通してみんなと共有したいという企画書、はたまたくるみちゃんを休ませてあげたいという企画書まで、内容は実に多岐に渡りました。

と同時に、どの企画にも共通しているのは、「自分の頭の中をくるみちゃんのフィルターを通してみてみたい」という思い。

そのアイディアを考えて下さっている間、きっと頭の中はくるみちゃんに乗っ取られ、そのアイディアを見たらくるみちゃんの頭はその方に乗っ取られ。企画書は、頭の中のハイジャックでした。

30日間1日1作の制作道場ですが、30をはるかに越えるアイディアが寄せられ、たとえ募集アイディアばかりをやっても全部は実現できないという数になりました。決して一人からは浮かび上がってこない量と幅のアイディア。

ということはつまり、決して一人では受け止めきれない量と幅でもあるのです。

中にはどうしても実現してみたかったものもあったようだし、顔の見える方が出してくれた企画書は何とかして一つでも実現に結び付けたいと考えていたようですが、物理的にもどうしても実現は難しかった。

そんな企画書に今年もまたお礼の気持ちを込めてくるみ印(じるし)の確認印を押すことにいたしました。ハイジャック、本当にありがとうございました。

 

そこで+zenが作り上げたのが、この拷問器具。

確認印、企画書を書いてくださった皆様に代わり、私どもの手で、厳粛に執行いたしました。

 

坂本善三美術館 学芸員 山下弘子